投稿日: 2023年1月20日
【パチサミ公式コラム】パチスロ販売業者組合『回胴遊商』の歴史と役割
遊技機が開発されてからユーザーの皆様に健全な遊技体験を提供するまでには、様々な専門業者が関わっています。パチスロメーカーはもちろん、パチスロ機を安全に運送する業者やホールでの設置を行う専門業者なども欠かすことはできません。そして、そういった共通の目的を持った会社同士で自発的に集まり、相互扶助のために作る組織のことを「協同組合」といいます。
遊技業界には様々な協同組合がありますが、新しくリリースされたパチスロ機や中古パチスロ機をホールに向けて販売する「パチスロ販売業者」の集まりである「回胴式遊技機商業協同組合」もそのひとつです。略称を「回胴遊商」と呼びますが、以下の記事もそれに倣います。
販売業者の組合といっても、ただパチスロ機を売買するだけ、という役割だけに留まりません。パチスロ機の設置や撤去、中古機流通にリサイクルと幅広い役割を担い、ホールとパチスロメーカーの架け橋的な存在でもあります。
『回胴遊商』とは?
パチスロは1985年に改正された「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)」で7号営業(2016年の法改正からは4号営業)として許可されたことにより、着実に成長の道を歩み始めることになりました。
しかし、パチスロ機はソフトを中心とした機械構成のため、パチスロメーカーの手を離れてからは第三者によりソフトそのものに手を加えられる危険性があります。そのことからいわゆる不正改造が業界の大きな問題となりましたが、やがてその問題の発生要因が流通段階にもあることが判明しました。これを受けてパチスロメーカーの組合である日本電動式遊技機工業協同組合(以下、日電協)はこの「流通上の問題解決」のため、1993年にパチスロ販売業者だけの登録制度を採用し、業界全体の制度発足までのつなぎとしました。
こうした中で1994年6月に生まれたのが販売業者の組合である「回胴式遊技機販売商業会」でした。この商業会こそがのちの「回胴遊商」になります。
回胴遊商の活動目的
回胴遊商は遊技機流通の健全化に積極的に取組む組織として「遊技業界の安定・発展」と併せて「組合員の相互扶助、経済的な安定と地位向上」、「販売業者の業の確立」を目的に、パチスロ販売を主たる事業として行っている販売業者により、1998年に「事業協同組合」としての法人格を取得して設立された全国組織の協同組合です。
「販売業者」とは、第一義に「パチスロメーカーから委託を受けた新台の販売、あるいはホール間の中古機売買・移動」を主な事業とする業者を指します。ただし、単にパチスロ機を販売することだけが販売業者の業務ではなく、そのパチスロ機が正常な動作をするものであるのか、あるいは不正な改造が施されておらず、ユーザーの皆様が安心して遊技できるものであるかどうかを点検確認するという極めて重要な業務などもその範疇に含まれます。
従って回胴遊商は、各組合員がその社会的責任を確実に果たせるよう、遊技機の点検確認のためのノウハウを共有したり、設置責任の明確化となる確認シールの発行を行うなど、ホールが適切な運営を行う上で必要不可欠な部分を担っており、遊技業界にとってなくてはならない団体です。
パチスロ機販売の流れ
組合員は、パチスロメーカーから新台の販売を委託され、委託された新台をホールに納品しますが、パチスロメーカーによっては、組合員を介さず、直接ホールに販売・納品する場合もあります。
組合員は、一度ホールの営業で使用され、ホールの島から外された「検定期間内のパチスロ機」を設置元ホールから購入して、新たに設置するホールに売却します。パチスロ機の中古機流通は回胴遊商の組合員が介在するので、不正が入り込む余地がなくなり、適正な流通が実現できる仕組みとなっています。
【遊技機販売業者登録制度と遊技機取扱主任者制度】
遊技業界では日遊協(正式名称:一般社団法人 日本遊技関連事業協会)が制度の運用に当たっている「遊技機販売業者登録制度」と「遊技機取扱主任者制度」という2つの制度を設けています。パチンコ・パチスロをホールに設置するためには、「遊技機販売業者登録制度」に基づいた登録販売業者の資格が必要です。また、その設置に従事する者については「遊技機取扱主任者制度」に基づいた資格の取得が必須となっています。回胴遊商の組合員は、これらの資格を取得しており、適正・適切にパチスロ機の納品・設置を行っています。
回胴遊商の事業内容
- 組合員の取り扱う回胴式遊技機に附属する機器及び物品の共同購買
- 組合員のためにする回胴式遊技機の共同宣伝
- 組合員のためにする回胴式遊技機の確認シールの発行
- 回胴式中古遊技機の流通に関わる確認証紙(中古用)の発行及び書類の打刻
- 回胴式遊技機の認定申請に関わる確認証紙(認定申請用)の発行及び書類の打刻
- 組合員の事業に関する経営及び技術の改善向上又は組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
- 組合員の福利厚生に関する事業
- 前各号の事業に附帯する事業
「確認シール」は、販売と設置責任を明確化するために筐体前面に貼付されるシールです。当初はパチスロ機内部に貼られていましたが、2003年1月からは筐体前面に貼付するルールに変更となったので、これをお読みの皆様も実際にご覧になったことがあるかもしれません。回胴遊商の組合員・特別会員が販売したパチスロ機には必ず貼られており、これにより遊技機流通の安全が担保される仕組みになっています。
また、回胴遊商では中古パチスロ機の設置に際し、所轄警察署に提出が必要な書類の打刻や確認証紙の発行も行っています。これらのことからも、回胴遊商が単にパチスロ機の販売のみを担当する事業者の組合ではないことが分かります。
回胴遊商に加入するメリット
パチスロ販売業者が組合員として回胴遊商に加入する際のメリットは多岐に渡っていますが、ここで代表的なものをご紹介します。
- 対外的な信用面でプラスになる。
組合員・特別会員・賛助会員を合わせて約600社が加入する大きな全国組織なので、事業の信頼感や自社の価値を高めることができます。 - 研修会に参加でき、行政講話や最新の業界情報が手に入る。
全国7支部において毎年支部ごとに研修会を開催しています。この研修会では行政講話をはじめ、遊技業界関係者による講演などがあり、定期的に業界の最新情報を入手することができます。 - 新たな人脈を作ることができる。
各種会議や環境保全活動、懇親会などは組合員同士の重要な情報交換の場になります。また、これらを通して組合員同士の横のつながりが生まれ人間関係も広がり、新たな商機が得られます。 - 従業員の点検確認における知識と技術の向上を図ることができる。
定期的に開催される講習会などを受講することにより、従業員の中古パチスロにおける点検確認のスキルや知識を十分に身につけることができます。 - 通達文書などが入手でき、今後の販売活動などに活かすことができる。
組合から発出される行政からの通達文書や業界各団体からの情報、業界会合の結果などの各種情報を入手することができ、自社の経営戦略や販売活動に活かすことができます。
どれも大きなメリットですが、上記目的の中でも特に最初の「対外的な信用面でプラスになる」という項目はホールと取引をする上でとても大きなメリットになります。また、組合の誕生の経緯からも分かるように、組合員が担う責務の一つに流通段階における設置責任があります。講習会などで十分な知識と技術を身につけ常に最新の情報を得ながら、点検確認などを日常的に行っている回胴遊商の組合員は、いうなれば「不正を見抜く」プロであり、ホールとしても安心して流通を任せることができる大切な存在です。
組織について
回胴遊商はパチスロ機の販売を主たる事業として行っている販売業者である「組合員」のほか、パチスロメーカー及びその関連会社である「特別会員」、運送業者や遊技機リサイクル処理業者などの「賛助会員」により構成されています。1994年の設立時、組合員数は日電協加盟メーカーの21社を含め142社でしたが、2022年現在の組合員数は組合員・特別会員・賛助会員を合わせて約600社の大きな組合に成長しています。
回胴遊商では、8月を除いて毎月1回開催される理事会において、組合の業務方針などを審議し決定しています。この理事会の諮問機関として「遊技機流通委員会」「総務委員会」「綱紀委員会」「個人情報保護委員会」の4つの委員会を設け、それぞれの委員会が担う課題に取組んでいます。各委員会の役割は以下の通りです。
委員会 | 役割 |
1.遊技機流通委員会 | パチスロの健全な流通と適正業務の徹底を目的に活動しており、 販売と設置責任を明確化するための確認シール事業をはじめ、 中古機流通事業においては、中古移動及び認定申請業務の 適正で円滑な運用に努めています。 また、技能試験においては製造業者団体の協力の基、 中古機流通業務に携わる遊技機取扱主任者全員を対象に、 製造業者監修の講習や試験を実施することにより、 知識と技術の向上に取組んでいます。 |
2.総務委員会 | 委員会の組織構成を「事業部会」及び「総務部会」に分けて運営しています。 「事業部会」は組合のホームページ管理及び広報誌等の制作、 「幼児車内放置ゼロ」巡回活動、共同購買事業、闇スロ撲滅を所管。 また、「総務部会」は、定款・規約・規程の整備、福利厚生に関する運営、 回胴式遊技機処理管理票の管理及びリサイクル業者の視察・指導を所管し、 委員会活動の充実と効率的な運営に取組んでいます。 |
3.綱紀委員会 | 法令及び各種内規に違反する組合員の行為が明らかになった場合、 随時開催して事案の内容を調査した上で、組合としての処分の要否、 量定を審議・決定し、理事会に具申します。 |
4.個人情報保護委員会 | 個人情報の保護に関する法律、その他関連法規の趣旨に基づき、 組合員等の個人情報の保護及びその適正な取扱いについて協議しています。 |
中古機・認定機取扱い件数の推移
年度 | 中古機 申請台数 | 認定機 申請台数 |
2006年度 | 58,632 | - |
2007年度 | 431,018 | - |
2008年度 | 400,271 | 10,911 |
2009年度 | 386,117 | 239,910 |
2010年度 | 351,946 | 45,545 |
2011年度 | 392,742 | 50,510 |
2012年度 | 504,424 | 45,733 |
2013年度 | 487,353 | 64,477 |
2014年度 | 491,123 | 170,145 |
2015年度 | 536,716 | 111,487 |
2016年度 | 523,310 | 200,750 |
2017年度 | 535,925 | 669,239 |
2018年度 | 376,857 | 0 |
2019年度 | 381,661 | 0 |
2020年度 | 377,676 | 18 |
2021年度 | 472,886 | 147,205 |
2006年に回胴遊商による中古移動書類の発給業務が開始されて以降、中古パチスロ機の取扱いが増加しました。
また、2008年には認定申請の書類発給業務も開始されました。「認定」は検定通過から一定期間(3年間)過ぎた機種の設置延長の申請をホール営業者が所轄警察署に対して行い、それが許可されるとさらに3年間設置し続けることができる制度です。遊技業界を取巻く環境により認定機の申請台数は大きく変わります。例えば2017年度は5号機から6号機への規則改正に伴う大規模な前倒し認定が行われたことにより、申請台数が大幅に増えました。
検定・認定については「パチスロと法律(風営法・風営法施行規則・遊技機規則など)」に詳細が書かれております。
回胴遊商とリサイクル活動
回胴遊商は、「野積み」などの問題に対応するため、不要となったパチスロ機のリサイクル処理についての活動にも積極的に取組んでいます。組合員が、あらかじめ産業廃棄物収集運搬業者及び選定業者(正式名称:遊技機リサイクル選定業者)それぞれと運搬・処理に関する委託契約を締結することにより、不要となったパチスロ機が適切にリサイクル処理されるという流れになっています。
遊技機リサイクル選定業者とは業界6団体で構成する遊技機リサイクル推進委員会が選定した廃棄物処理業者のことです。遊技機リサイクル推進委員会では選定業者に対し、定期実査を行って遊技機のリサイクルが適正・適切に行われているかの確認を行っています。
『保証書』について
遊技機流通委員会が担う中古機流通事業においては、遊技機取扱主任者の目視、その他の方法で行う点検確認を基に「保証書」を作成しています。「保証書」というと家電製品などでは「製品が不完全なものであれば修理もしくは交換対応をする」という意味の証書ですが、中古遊技機の流通においては「そのパチスロ機が不正改造されておらず型式通りの仕様になっている」ことを保証する証書という意味になります。
この「保証書」作成のためには遊技機の点検確認、その他事務作業など多岐にわたる工程が必要になります。これは万が一ミスがあると中古移動の取り消しなどの重大なペナルティを受ける可能性を含むもので、そのような事故を防ぐため、回胴遊商ではパチスロメーカーや組合員同士が連携し情報や事例を共有するとともに、定期的に実機を用いて製造業者監修の講習会や技能試験を行うなどして知識と技術の向上に努めています。
また、これまで組合員の遊技機取扱主任者・従業員には、遊技機の点検確認項目などをまとめた「信頼への道」というハンドブックを配布し、点検確認の精度やコンプライアンス意識を高めてきましたが、近年は、専用サイトを構築して、現場にいる遊技機取扱主任者が点検確認項目などをスマートフォンからいつでも閲覧できるようにしています。
なお、ハンドブックには、コンプライアンス実践ガイド、確認シールの目的及び適正リサイクル処理の概要なども掲載していたことから、これらの内容は電子書籍化し、当該サイトに掲載しています。
なお、実際の点検確認業務では、責任の所在を明確化するため顔認証システムなどを導入し「いつ・どこで・だれが」点検確認をしたかの情報が付帯されています。これらは適切に点検確認が行われたという証明となり、ホールにとっても安心して流通を任せられる仕組み作りがなされています。
回胴遊商の社会貢献活動
回胴遊商では東日本大震災をはじめとした災害復興支援関連への寄付や協賛、「幼児車内放置ゼロ」巡回活動への取組みなど、様々な社会貢献活動を行っています。
特に「幼児車内放置ゼロ」巡回活動への取組みは2005年から開始され、毎年継続しています。2022年10月までに回胴遊商組合員による幼児発見数は15名を数えています。
また、東日本大震災の際には日電協と共同で、娯楽が不足しがちで住民の交流が少ない仮設住宅への復興支援として、路線バスを改造してカラオケルームと子どもたちのための家庭用ゲーム機を搭載した「パチボー・スロタン号」を製作して被災地を巡回しました。そのほか、炊き出しやシャワーコンテナによるお風呂のサービス提供、宮城県・福島県・岩手県での仮設住宅カラオケ歌合戦などを実施しました。
パチスロサミットとパチスロサミットONLINE
回胴遊商の活動としては、日電協と共同で実施する『パチスロサミットONLINE』の運営も挙げられます。前身となるファン参加型イベント『なんとかしようよ!! パチスロ文化』を2010年2月に日電協と共同で開催しました。その後、両団体は2012年から2019年(2018年は除く)まで毎年秋葉原においてファンイベントを開催していましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行により、2020年のファンイベントは中止を余儀なくされました。その代わりにパチスロの販売促進、及び稼働促進活動の一環として開設したのがこの『パチスロサミットONLINE』です。
回胴遊商の今後についてのメッセージ
今、世の中の様々な仕組みが大きく変わろうとしている中、我々パチンコ・パチスロ業界もまた時代の変化とともに変わらなければならない変革の時代を迎えています。この時期にあって我々は一丸となって勇気を持ち、この厳しい難局を乗り切り、大衆娯楽であるパチンコ・パチスロ産業を守り、希望ある業界の明日を築いていかなければなりません。
業界の繁栄を目指してやるべきことは沢山あります。当組合も、先人や諸先輩が築いたこの素晴らしい遊技業界の繁栄のために、業界各団体と連携しながら、パチスロ販売業者の使命と役割を十分に自覚し、努力してまいります。