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投稿日: 2023年2月10日

【パチサミ公式コラム】パチスロは特許で出来ている。

パチンコやパチスロに限らず、世の中に存在するあらゆる製品は、その開発において独自の技術や製法が駆使されています。メーカーなどが「発明」した新しい技術や製法は特許庁の登録を受けると「特許」と呼ばれ、それらは産業の発達のため「特許法」で保護されています。したがって他者が権利を持つ特許を第三者が無許可で利用することは出来ません。

そして、特にパチンコやパチスロに関してはその独自性の高さから「利用される発明」数が非常に多く、このことから俗に遊技機を「特許の塊」と称す事もあります。

この記事ではそんな「遊技機と特許」の関係について解説いたします。もしかしたらみなさんにとっても、今まで知らなかった新しい発見があるかもしれません。

『特許』と『発明』

大前提として、特許は「発明」に対して国が奨励・促進するものです。また特許法において「発明」は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。

少し難しい表現ですが噛み砕くと「①自然法則を利用する。②技術的思想である。③創作である。④高度である」を満たすものが発明であり、特許として出願できるもの、ということになります。これに反して、「自然法則を利用していないもの」は該当しません(例えばすでに存在する表計算ソフトの便利な使い方や、じゃんけんの新しいルールなど)。

これら「発明」が特許法により保護される理由は複数ありますが、特に重視されるのは、それが産業の健全な発展に必要不可欠だからです。

例えば、誰かが開発した新しい発明に対し、その保護が一切ないとしたらどうでしょうか。そのような状況では努力して発明を行うよりも真似した方がコストが掛からないため、あまねくすべての製品の開発は「後出し」の方が有利になっていきます。結果、新しい技術を発明する努力は失われ、やがて産業は衰退していくことでしょう。

このような状況を防ぐため、国は特許を厳密に保護しています。

パチンコパチスロと『特許』

ご存知のようにパチンコやパチスロにはその土台として「遊技機規則」があります。これは守るべき絶対のルールであり、すべての遊技機はそれに抵触しないよう厳密に設計されています。そこに特許が加わります。

「ゲーム内容」そのものや「出玉面の設計」、または「役物」などのハードウェア的な部分など、パチンコやパチスロに利用される特許は枚挙に暇がありません。ひとつの遊技機が世に出るにあたり、少なくとも数百の特許が使用されています。

パチンコパチスロ
特許の例
液晶演出関連
役物・ギミック関連
リール制御関連
BGM・SE関連
筐体デザイン関連
ゲームシステム関連
不正処理関連

パチンコやパチスロに関しては、遊技機の独自性も相まって大量の特許が使われているため、各メーカーが出願する特許数も毎年膨大な数にのぼっています。では、他業界に比べ、遊技業界の特許数はどの程度多いのでしょうか。実際に比べてみましょう。ここでは同じく特許の出願数が多いとされる産業である「自動車業界」と比較します。

順位出願人件数
1位三洋物産3,004
2位三共1,531
3位ユニバーサル
エンターテインメント
738
4位サンセイアールアンドディ732
5位大一商会640

順位出願人件数
1位トヨタ自動車3,959
2位本田技研工業1,569
3位いすゞ自動車455
4位マツダ391
5位ダイハツ工業354

(知財ポータルサイト『IP Force』より。2022年1月~10月)

このように、遊技機には本邦を代表する産業である自動車産業と遜色のない数の特許が出願されています。これがパチンコやパチスロが「特許の塊」と呼ばれる所以です。

『業界団体』と『パテントプール』

原則として、特許は「発明の権利を第三者による不正使用から守る」という意味があります。では不正ではない利用はどうでしょうか。これはもちろん「可能」です。例えば、特許の権利保持者と利用希望者の間に利用許諾等の合意がある場合は問題ありません。この場合、許諾には対価が必要になり、金銭的な契約が交わされることが多いでしょう。

一方で金銭を介さず、企業同士が持つ特許を互いに使用しあう相互許諾契約などを取り交わす方式もメジャーです。これを「クロスライセンス」と呼びます。

しかし前述のように遊技機を製造する際に使われる特許は、その根幹技術に密接に関わる部分を含めて膨大な数にのぼり、またその権利を保持する企業もバラバラです。そのような状況下では遊技機ごとに個別に利用許諾を取る、あるいはクロスライセンス契約を交わす等の方法は現実的ではありません。

そこで遊技業界では、クロスライセンスに合意した同じ目的を持つ企業が集合し、参加者同士で特許の利用を許諾しあう「パテントプール」という共同事業体(コンソーシアム)が広く利用されています。

<パテントプールとは?>
パテントプールとは、ある技術に権利を有する複数の者が、それぞれの所有する特許等、又は特許等のライセンスをする権限を一定の企業体や組織体(中略)に集中し、当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が必要なライセンスを受けるものをいう(公正取引委員会「知的財産ガイドライン」より)

つまり、パテントプールの構成企業はおのおのが持つ特許に関し、互いにクロスライセンス契約を結んだものとみなし、煩雑な手間を回避しながら必要なライセンスを随時利用し合うことができる、というものです。パテントプール自体の運営は第三者組織に委託されますが、遊技機業界においては「日本電動式遊技機特許株式会社(略称:NDT)」「一般社団法人日本遊技機特許協会(略称:JAMP)」「日本パチスロ特許株式会社(略称:PS特許)」がそれにあたります。

繰り返しますが、パチンコやパチスロは特許の塊です。それを利用せず、さらに他者の権利を侵害しないようにしながら開発するのは非常に難しく、言うなればそれはパチンコやパチスロという遊技機自体の「再発明」に近い作業になるでしょう。

もちろんパテントプールは必ずしも参加しなければならないという性質のものではありません。しかし手間と費用の面、あるいは「遊技機規則」に抵触しないためという法的な側面もあることから、遊技業界では他業界に先駆けてこのパテントプールの考え方が発展しており、現在開発を続けているメーカーの多くは、いずれかの共同事業体に参加している場合がほとんどです。

「日本電動式遊技機特許株式会社」及び「日本パチスロ特許株式会社」は主にパチスロの特許を扱い、「一般社団法人日本遊技機特許協会」は主にパチンコを扱うパテントプールです。このように多くのメーカーはいずれかのパテントプールに参加しており、参加企業の特許を必要な時に利用できる状況にあります。パテントプールは、パチンコ・パチスロの産業的な発展に役立てられています。

パチスロメーカーの代表的な特許例

ここまでは特許の意義や仕組みについて述べて参りましたが、次に実際にどんな特許があるのかを見てみましょう。以下に、パチスロサミットONLINEを運営する「日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)の組合員(企業)」が保有する代表的な特許について記します。

特許:マイスロ

▲サミー株式会社[特許第5536024号](パチスロ交響詩篇エウレカセブン)

マイスロ関連のシステムに関する特許。パスワードが入力されてから遊技履歴情報を記憶し、ミッションクリアなどの情報を出力可能。

特許:穢れシステム

▲株式会社メーシー[特許第6420286号](SLOT魔法少女まどか☆マギカ)

穢れシステムに関する特許。遊技者にとって不利な事が起きると因果値が決定され、因果値が所定値に到達すると特典を付与する。

特許:ベンリーシステム

▲ベルコ株式会社[特許第6114729号](捕物帳・斬(初出))

いわゆるダブルレバー(MAXベット+スタートレバー)。MAXベットとレバーONを同時に行える。

特許:BB演出の選択

▲株式会社大都技研[特許第5754006号](吉宗・番長シリーズ)

ボーナス中のキャラ選択に関する特許。所定時間ごとに選択できる演出を切り替え、所定の操作手順が操作されることで演出を選択肢、操作手段が操作されるまでの期間において、選択できる演出を切り替えるタイミングを報知する。

特許:分離筐体

▲株式会社オリンピア[特許第3761823号](オリンピアの機種全般)

筐体分離に関する特許。前扉は上扉と下扉からなる。リールユニットと主基板が設置された交換ユニットを有する。

特許:GOGOランプ

▲株式会社北電子[特許第4997388号](マイジャグラーシリーズ)

告知表示部に関する特許。告知表示部に告知を表示する表示パネルを前面パネルの中央に配置する。表示パネルは前面パネルに形成される凹部の奥側に配置する。

特許:運命分岐

▲株式会社オーイズミ[特許第5890090号](パチスロひぐらしのなく頃に祭2)

ゲーム性に関する特許。遊技の抽選によってRT状態を決定する遊技状態Aと、遊技者の技量によってRT状態を決定する遊技状態Bとがある。遊技状態A又は遊技状態Bのどちらを選択するかは、遊技者が操作したストップスイッチの種類によって異なる。

特許:おしりペンペン

▲ネット株式会社[特許第4931030号](シンデレラブレイド)

PUSHボタンの押下毎に加算ATゲーム数抽選と連打ゲームの継続抽選を行う(おしりペンペンタイム)

特許:神機解放

▲山佐株式会社[特許第5922733](ゴッドイーターの神機解放)

上乗せ数を可動体の可動ごとに報知する。


その他、代表的な特許を列挙します。

メーカー代表的な特許搭載機種例
山佐特許第4215245(パルサー等のリール変則始動)
最小遊技時間経過までの時間に応じて、
所定のタイミングで所定の順にリールの回転を開始させる。
パルサーシリーズ
大都技研特許第5909728(番長シリーズの潜伏ゲーム数に応じたBGM変化)
AT開始によりBGM1を出力し、AT潜伏ゲーム数が所定値を超えるとBGM2に変更する(エンブレムへのBGM変化など)
番長シリーズ
特許第6578565(リゼロのアイテム表示)
電断復帰後は電断前に表示していたアイテムを非表示にする。電断復帰後に新たにアイテムを獲得した場合はアイテム獲得演出を実行し、獲得したアイテムを表示する。
リゼロ
北電子特許第6635330号
特別遊技状態の抽選に関する特許。
第1の操作手段(例:スタートレバー)の操作に基づく抽選と、第2の操作手段(例:ガチャガチャ)の操作に基づく抽選がある。
第2の操作手段の操作に基づいてリールは変動し特殊態様で仮停止する。
機動警察パトレイバー
コナミ
アミューズメント
特許第6958844号
透過部の位置が異なり目押し図柄である第1図柄、第2図柄を少なくとも備え、第1図柄を停止させる遊技、第2図柄させる遊技では停止操作に先立ってそれぞれの透過部の位置を案内する表示を行う。
戦国コレクション4
エンターライズ特許第7021441号
当選役に応じて攻撃する味方キャラが決定され、同じキャラクタが連続すると敵へのダメージが大きくなる。
パチスロ モンスターハンター
:ワールドTM

上記の画像・表を見ると、各機種の「代表的な機能」などが特許化されているのが分かります。これらはあくまで一部抜粋であり、新機種の開発がなされた場合には新しく発明された演出やシステムを含め、複数の特許がまとめて申請されるケースが多々見られます。それを各メーカーが随時おこなっているので、もしかしたら今この瞬間にも、将来のパチスロの形をまるっきり変えてしまうような、斬新で画期的な特許が出願されているかもしれません。

こんなものが? 意外な特許例

最後にこの記事の締めくくりとして、各メーカーが保持する意外な「おもしろ特許」についてご紹介いたします。もしかしたらこれを見るとパチスロの事がますます好きになるかもしれません。なおこちらはすべて搭載実績が無い発明ですので、機種名は省略いたします。

高砂電気産業株式会社[特許第3292573号]:リサイクル品の回収機能

▲公開特許公報 特開平07-124329より引用

リサイクル品などの資源を投入する。投入した資源に応じて遊技機の入賞確率が変化する(これによりリサイクル価値が高い物品を効率的に回収できる)

サミー株式会社[特許第2918830号]:パチンコ台周囲のティッシュ入れ

▲公開特許公報 特開平09-131454より引用

パチンコ台の隣接する枠に容器を設け、容器にティッシュを収納する。パチンコ台周囲のティッシュ入れ。

KPE株式会社[特許第3537412号]:惜しい乱数がわかる

役の抽選処理に使用した乱数値、または乱数値の区分情報を報知する(同じハズレフラグでも実は惜しい場合があり、新感覚の遊技感につながる)

株式会社ユニバーサルエンターテインメント[特許第4489518号]:タバコ点火装置

▲公開特許公報 特開2006-025884より引用

タバコに火をつける点火手段を備え、遊技者の喫煙履歴データに基づいて点火手段を点火させるか決定する(そろそろタバコが吸いたいと思った時に火がつけられる)

株式会社大都技研[特許第4667169号]:雨が降る筐体

▲公開特許公報 特開2007-061202より引用

演出装置として雨を降らせる装置を有し、有利な状態であるほど大量の雨を降らせる。

山佐株式会社[特許第6307187号]:演出用水槽デバイス

▲公開特許公報 特開2018-134313より引用

ポンプが作動することによって液体を噴出させる。ポンプの作動は液面が落ち着くであろう時間が経過するまで禁止させる(空気を取り込んでしまい、液体を噴出させる演出が行われない事態の発生を防ぐ機構を備えている)


この他、各メーカーともとても意外な特許を出願しているケースがあります。特許情報は法律で「広く公開する」のがルールになっており、閲覧しようと思えば誰でも簡単にできます。もちろんインターネット上での確認も出来ますので、もし興味がある方がおられましたら調べてみるのも面白いかもしれません。



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