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投稿日: 2022年9月16日

【パチサミ公式コラム】パチスロライフサイクル『揺りかごから墓場まで』:誕生編

パチスロがファンのみなさんにホールで楽しんでもらえている時、それは遊技機としての一生で最も輝いている時です。もちろんパチスロは機械ですが、それが産声を上げてから使命を終えるまでには長い道のりがあります。

今回のコラムでは「パチスロゆりかごから墓場まで」と題し、パチスロが生まれる企画段階から廃棄やリサイクルで生涯を閉じる一連の流れをご紹介します。

パチスロ開発・製造・廃棄の全体の流れ

▲パチスロ誕生からの大まかな流れ

他の工業製品とパチスロで大きく異なる点は、製造元であるパチスロメーカーの責任のもと、「型式試験や検定」「輸送や設置」「廃棄やリサイクル」まで厳密に行われている、ということでしょう(これらについては後ほど説明します)。

例えば新台の場合、検定を受けた型式に属する遊技機がホールに設置されるところまでがメーカーの責任となりますので、メーカーはホールに自社の遊技機がしっかりと設置されていることを確認する必要があります。

今回は『パチスロ揺りかごから墓場まで:誕生編』として、開発から設置までを解説させていただきます。

パチスロ機の開発

▲根幹となる企画開発段階

まずはパチスロが産み出されるメーカー内の開発です。メーカーによって異なる部分はありますが、共通となる大まかな内容をご紹介します。

メーカー開発部門の紹介

▲各メーカーによって異なる部分があります

パチスロは細分化された各分野の専門職によって作られています。大まかにはソフト系とハード系に分けられる中で、出玉設計や申請などは遊技機ならではと言えるでしょう。

企画・開発の流れ

  1. 企画構想
  2. 仕様書・演出・サウンドなどの作成
  3. 仕様書をもとにプログラミング
  4. 試作機を制作して試射(評価・調整)
  5. デバック作業
  6. 型式申請

実際には1~5を繰り返すこともあり、内規変更によるスペック変更や検定通過機の未販売など、パチスロには多くの「産みの苦しみ」があります。また、開発の中断や中止も珍しいことではありません。どんな機種を企画・開発するかについては、全国の設置済み機種の稼働状況や、SNSやアンケートなどからユーザーの声を参照していたりしています。

開発期間

▲開発期間はおおよそ2年間

メーカーやタイトルによって異なりますが、およそ準備で3か月、開発で17~19ヶ月くらいかかると言われています。また、デバッグ(バグ取りなどの品質保証チェック)や各種調整は試射時期から始めて4~6か月ほど行われます。全て含めると、開発期間はおおよそ2年間にも及びます。

パチスロはメーカーの計画に基づきラインナップが編成され、販売時期から逆算して開発のスタート時期が決定されます。開発がスタートするには、提案された企画のコンセプトや内容に商品力があるかの判断、版権を扱う場合の版元との調整など準備が必要です。

順調に開発が進んだとして、型式試験にたどり着くまで約2年が必要になりますので、その間には内規変更・市場状況・メーカー事情・社会情勢の変化など開発に影響を与える要素も多く、開発途中のスペック変更や開発中止があり得るなど、その道のりは長く険しいと言えます。

型式試験と検定

▲パチスロが世に出るための必須の行程

パチスロは開発した機種を自由にリリースできるものではありません。法律で定められた規格を守っているか、を厳格にチェックされます。ここではその流れを簡単にご紹介します。詳しく知りたいという方は、こちらの記事もあわせて御覧ください。

  1. メーカーが公安委員会が試験事務を委託している試験機関(保通協・GLI Japan)で型式試験を受けます。
  2. 試験が行われ、メーカーに型式試験結果書が交付されます
  3. 試験に適合したら、メーカーが各都道府県の公安委員会へ型式の検定を申請します
  4. 検定を通過すると、検定通知書が交付されます。
  5. メーカーが設置するホールへ、検定通知書の写し等をホールに送付します
  6. ホールは検定通知書の写しや必要書類を管轄の公安委員会に提出します
  7. 公安委員会の承認を得て、その型式に属する遊技機を設置できます

大まかに分けると「指定試験機関による型式試験」「都道府県公安委員会による検定」を経て、ホールが設置申請するという流れになっています。

型式試験は予約・抽選から始まり、事前の組合による検査や試験機関のヒアリングを経て行われます。2022年8月現在、国家公安委員会に指定された試験機関は「保安通信協会(保通協)」と「GLI Japan」の2つがあります。

公安委員会による検定は、メーカーが提出した検定申請書や型式試験結果書によって行われます。書類による審査で問題がなければ検定通知書が交付され、公安委員会による公示も行われます。

パチスロ製造の基本

型式試験に適合し、検定取得したパチスロは、どのような流れで製造されるのでしょうか。その工程や使用される主な部品についてご紹介します。

生産の大まかな流れ

・主基板の製造

開発したデータをロムに書き込み、それを主基板に実装します。主基板は検査されてから、かしめ(※)で封印されます。
※基板などを改造したり取り外したりできないように特殊な方法で封印や固定されること

・本体の組み立ておよび本体への主基板実装

まず主基板以外の部品を本体に組み込みます。一通りの組付けが完了したら、本体検査が行われます。その後、かしめ封印された主基板を、組み立てと検査が終了した本体に実装します。現在、本体かしめ(筐体と主基板)は、一部条件がありますが、任意となっております。おおまかな流れは下記の通りとなります。

  1.  ASSY部品(筐体の枠・リール・ホッパー・セレクター・レバー・ストップボタン・電源ボックス)を組立てる
  2.  それらASSY部品を筐体枠に組み込む
  3.  最後にかしめ封印された主基板を取り付ける
  4.  動作チェック・検査を経て、梱包され、出荷準備完了となります。

※ASSY(アッシー)とは、パーツ単体ではなく、複数が組み合わされた構成部品を指します。

パチスロ機を構成する主な部品

パチスロの主要な部品は、出玉に影響を与える「メイン」とそれ以外の「サブ」に分けられます。

・メイン

主制御基板・リールユニット・ホッパー・停止ボタン・投入ボタン・セレクター・設定変更装置・電源BOX・スタートレバーなどがあります。

・サブ

液晶、サブ制御基板、演出制御基板などがあります。

スマートパチスロ(スマスロ)の場合

セレクター・ホッパーなど物理的なメダルをあつかう部品がなくなり、遊技メダル表示装置やそれを制御するセキュリティチップなどいくつかの部品が追加されます。

パチスロ生産工場について

▲埼玉県川越市にあるサミー工場

基本的には各メーカーがそれぞれ生産工場を所有しています。ここではパチスロが生産される工場についていくつかご紹介します。

工場の審査・条件・取り決め

生産工場についても、様々な条件が決められており、型式試験に適合した通りに生産する能力があるか、不正などが入り込む余地がないか、など厳格なチェックを受けた上でパチスロ生産を行っています。

工場の生産能力

工場によって異なりますが、サミー工場では1日で約3,500台の生産が可能です。生産に必要な部品等は、各メーカーの購買部など管理部門で販売計画に基づき調達されています。

工場で行われる検査

主基板実装前の本体検査と、完成品検査を行います。主基板実装前の本体検査では検査用主基板を使用し、どちらも遊技メダルを投入して一連の動作をチェックします。

なお、スマスロ(スマートパチスロ)では動作チェックに遊技メダルは使用せず、前述のセキュリティチップの検査などが追加されます。

パチンコホールへの運送・設置

完成したパチスロ機はメーカーの工場から梱包・出荷されますが、その運送や設置にはいくつかの取り決めや手続きがあります。例えば、運送にしても指定輸送業者の利用が必要で、設置作業も誰もが出来るわけではありません

運送

パチスロの運送は、メーカーやホールが任意に業者を指定して行うわけではありません。遊技機運送協同組合(遊運協)に加盟している運送業者を各メーカーが指定して運送業務を委託します。もちろんホールが直接受け取って運送する、ということも禁じられています。

運送に際しては、出荷元・出荷日時・発送先・到着日時・機種名・台数・製造番号など管理票では厳密に管理されています。また、納品時にもホールの責任者が梱包状態を確認した上で運送されたパチスロ機を受領します。運送中でも不正などが発生しないように厳格な取り決めになっています。

設置

パチスロが納品されたら、あとはホール従業員が設置すればいい、とお考えの方もいるかもしれません。しかし、パチスロの設置にも明確なルールがあります。設置完了後に設置確認という作業をメーカーもしくはメーカーに委託された指定業者によって行われる必要があります。指定業者には、

・全国遊技機商業協同組合連合会(全商協)または回胴式遊技機商業協同組合(回胴遊商)に加盟している登録販売業者
・遊技機を取り扱う従業員のうち、30%以上が遊技機取扱主任者である業者
・風営法により認められた特例営業者

以上の3つがあります。また、設置作業に従事するホール従業員や作業委託された者も、上記の指定業者の設置確認者による説明を受けて「遊技機設置確認書」に誓約・サインをする必要があります。

遊技機取扱主任者

上記で触れた「遊技機取扱主任者」は遊技機の適切な取扱いに必要な知識、技能及び資質を保持している者であり、日遊協(日本遊技関連事業協会)が定める資格です。

「製造業者遊技機流通健全化要綱」、「遊技機製造業者の業務委託に関する規定」により“新台設置時や特定部品交換時”の製造メーカーの点検確認作業が義務化されました。しかし全ての点検確認作業をメーカー担当者だけで行うことは無理があり、その業務を特定業者に委託することができることとなりました。

また「※特定部品以外の部品交換後」の点検確認については、遊技機取扱主任者を持つホール社員でも可能となっており、ホール側にとっても関心の高いものとなっています。
※特定部品とは、遊技機取扱主任者でも点検確認作業ができない部品で、「主基板」「サブ制御基板」「ホッパー中継基板」の3つです。

警察の立ち合い

前述の「型式試験・検定の流れ」で説明したとおり、遊技機の設置には公安委員会の事前の承認(変更承認申請)が必要です。検定を通過した型式の遊技機が間違いなく設置されているか、公安委員会の指示のもとで警察がホールに出向いて確認します。サミットやオリンピックなど国際的なイベントなどが実施されている期間は、警察の立会が不可能となる場合があり、業界全体として新台設置自粛期間を設けていたりします。



以上、パチスロの企画・開発~設置までの流れを解説しました。このような厳格な流れを経由して、ようやくホールで遊技可能となり、パチスロを安心して楽しんでいただける状況になります。次回は「パチスロ揺りかごから墓場まで:終活編」と題し、ホールでの使命を全うしてからのパチスロについてご紹介します。

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